やまと絵はその歴史の中で、絵画上に単一空間を作り出そうという指向を持っていなかったように思われる。それは、単一空間ではなくても色・形・構成などが整合的でありさえすれば、十分絵画として統一的な空間を作り出せることを知っていたからだ。しかし実際には、単一空間ではないが統一空間になっているという優れた作品ができることは稀だったはずである。一方漢画は、単一空間を指向するがゆえに、結果的に統一空間を実現している作品が多かったに違いない。単純に両者を見比べれば、単一空間である漢画の方が見る者により強い印象を与えただろう。これらのことが、室町時代以降の武家中心の社会状況と相まって、漢画の隆盛を生んだと考えられる。