安土桃山時代の絵画には独自の空間性がある。それは、単一空間ではなく、多元的空間である。おそらく、元々やまと絵が持っていた空間性と室町時代以降の漢画の空間性が統合されて行く過程で生み出されたものだろう。その統合の最初の立役者は、狩野派二代目・元信である。始祖の正信が仏画や漢画しか描かなかったのとは違って、元信は土佐派などやまと絵の成果を大胆に取り入れて画期的な作品群を残した。しかし、それまで存在した事がなかった多元的空間という空間性は、まだまだこなれたものにはなっていなかった。この一筋縄では行かない統合を、比類なき力量によって完成してみせたのが狩野永徳である。